newsletter No.7

No.7

2005年7月25日

 目  次

・第3回食の安全・監視市民委員会総会報告
・2005年度 FSCW活動方針ほか
・食品安全委員会傍聴記
・2004年 FSCW度決算報告ほか
・狂牛病が問いかけたもの
・FSCWの活動
・やさしい「農」生物学(3)
・トピックス 違法作物が相次いで流入か
・FSCW運営委員紹介
・FSCW運営委員会報告、事務局から

巻頭言

 2年前の7月、私たち食の安全・監視市民委員会は、熊本製粉という会社が、違法添加物ナイシンZ(保存料)を製造販売しているという情報を得て、厚労省に取締を求める申し入れをしました。次の頁に要約を掲載しています。

 ところが厚労省は、現地保健所に調査させ、これはナイシンを精製していないから単なる発酵調味料であって保存効果はないので、日持ち向上をうたわせないという指導をしただけでした。ナイシンZは現在食品安全委員会で食品添加物指定の可否を審議中の保存料ナイシンAとほとんど同じ構造をしている抗菌性物質です。私たちは、その後延々と厚労省とやりとりしてきた結果、昨年11月厚労省がようやく保健所に現物を収去させ、抗菌活性試験を行わせました。そして、今年6月3日、ようやく福岡市からの照会に対し、未指定添加物であるという回答を出しました。これも次の頁に掲載します。

 私たちは、指定を受けない添加物は法律上製造販売してはならないのに、この製品はすでに製造販売されていること、食品には抗生物質を含んではならないという食品の規格基準があるのに、この製品には抗菌性があること、精製していないというが逆浸透膜を使って濃縮していることなど、商品宣伝チラシ、新たな保存料を開発したという新聞記事など、多くの資料も提出しました。抗菌活性についてはたくさんの論文も出しました。

 いったい厚労省という役所は何を考えているのだろうかと、この2年間思い続けてきました。こんなに証拠があるのに、なぜすぐ動かず、2年も放置するのか実に不思議でした。6月3日に回答が出た時点で、当該製品はすでに焼却されており、使っていたコンビニチェーンも使用を止めています。禁止しても痛まない時期を選んで禁止したとしか思えないのです。
 しかし何よりも問題なのは熊本製粉という会社の態度です。当時、「ナイシンZはナイシンAとほとんど変わらない抗菌性物質で保存効果があるが、厚労大臣の指定を受けないと使えない」という学者の発言もあったのに、それを無視して、発酵調味料などという名称で売ってしまったのです。厚労省もまた、塩や酢という食品である調味料でも保存効果があるから、乳酸菌発酵調味料で保存効果があるからといって、直ちに添加物(保存料)に該当するわけではないと言い続け、いわば熊本製粉を応援し続けたのです。

【ナイシンについての資料】 
(日) 2003年7月 厚生労働大臣坂口力様
 申入書 指定外添加物製造販売について
食の安全・監視市民委員会代表 神山美智子
 このたび、下記食品添加物が厚生労働大臣の指定を受けずに製造販売されていることが判明しましたので、調査及び取り締まり方申し入れます。

商品名 ラクティスエイド
販売者 熊本製粉株式会社
標示例 調味料
実際の使用方法 保存の目的
含有指定外添加物 ナイシンZ(抗菌ペプチド)
添付書類
1 ラクティスエイドチラシ
2 日経産業新聞(2月12日付)
3 原著論文(福岡県保健環境研究所年報第28号、95?100、2001)など

(月)福保食 第93号 平成17年6月3日
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長様
福岡市保健福祉局生活衛生部長(食品安全推進課)
乳酸菌発酵調味料について(疑義照会)
 別添1の方法で製造している乳酸菌発酵調味料について、別添2「食品・添加物等規格基準に関する試験検査等の実施について」のとおり抗菌活性が認められた。

 本製品は、(日)食品に対し、調味料として使用されていること、(月)食品安全委員会で添加物指定のために評価が継続中のナイシンAと類似の構造・活性をもつナイシンZを含んでいること、(火)製粉化前の原料の製造工程においてナイシンZ生成菌を選定した上で膜処理により濃縮していること、?当該製品を食品に使用する濃度範囲で抗菌活性が認められたことから、未指定添加物を含む製剤に該当すると考えるがいかがか。

(添付資料)
別添1 乳酸発酵調味料の製造工程
別添2 食品・添加物等規格基準に関する試験検査等の実施について(乳酸菌発酵調味料の抗菌活性試験結果を含む)
*添付資料は省略

(火)食安基発第0603001号
平成17年6月3日
福岡市保健福祉局生活衛生部長殿
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長
乳酸菌発酵調味料について(回答)
 平成17年6月3日付け福保食第93号で照会のあった標記調味料に係る疑義については、下記のとおり回答します。

 貴見のとおりで差し支えない。

 2年間というと、私はカビ防止剤イマザリルを思い出します。私がアメリカ調査で行ったカリフォルニアのレモン処理工場で、TBZの効かないカビに対しイマザリルを使っているという情報を得て、違法添加物だと厚労省に申し入れたのが、90年夏でした。しかし厚労省は調査中、調査中とくり返した後、ようやく92年9月、使用しないようにという通知を出しました。やれやれと思ったのもつかの間、3日後には食品衛生調査会に添加物指定の諮問をし、11月には正式に指定・即日施行してしまったのです。

 食品安全基本法ができ、食品衛生法も改正され、国には食品の安全を確保し、国民の健康を保護する責務が負わされたというのに、90年当時とほとんど変わらない行政姿勢をとり続けるなどということは、理解できません。

(神山美智子)

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