newsletter No.10

No.10

2006年7月25日

 目  次

・第4回 食の安全・監視市民委員会総会報告
・2006年度FSCW活動方針ほか
・総会記念講演
・2005年度 FSCW決算報告ほか
・決議 米国産牛肉の輸入再開に反対します
・FSCWの活動
・やさしい「農」生物学
・トピックス 米国産牛肉をめぐる動き

巻頭言

6月29日、環境ホルモン学会の講演会があり、非常に印象的な報告がありました。
その一つがカニクイザルを使った行動毒性試験です(根岸隆之ら)。化学物質の毒性を評価する場合、通常ラットを使いますが、よりヒトに近いサル類を利用しようというのです。妊娠中の母ザルにビスフェノールA(BPA)を皮下投与(ポンプを埋め込み長期持続的に一定量を投与する)して、生まれた子ザルの様子を観察するのです。生後2か月後から定期的に母子行動試験、アイコンタクト試験、出会わせ試験、指迷路試験などの観察をした結果、母子行動試験において、オス子ザルの行動がメス化していることが観察され、出会わせ試験(一つのケージに2頭の子ザルを入れて様子を観察)では離乳後6ヵ月以降でも性差の消滅が観察されたというものです。

ラットでもサルでも同じような影響が見られるということは、ヒトを含む広くほ乳類でもありうる影響と考えられるというのがまとめでした。

もう一つの報告は妊娠牛の牛乳問題です(佐藤章夫)。牛は生後14月で人工授精により妊娠、妊娠期間は280日。そして出産3月後に人工授精により次の妊娠をさせる。出産前60日は母体を保護するため搾乳せず、産後5日間の初乳は子牛に与えるので、結局1年365日のうち300日は搾乳しているというのです。つまり妊娠中もミルクを搾られ、私たちが飲んでいるのだそうです。妊娠牛の乳のホエイ(乳漿)中には、非妊娠牛のそれと比べ、最大で30倍もの女性ホルモン物質を含んでいるので、前思春期の子どもに低用量避妊ピルを毎日飲ませているようなものだと報告者は述べています。そして、子ども向けには非妊娠牛から搾った牛乳を「非妊娠牛から搾乳した安心子ども牛乳」として提供することができないかとも提唱しています。こうした酪農問題を評価の対象にしない食品安全委員会のBSE評価は無意味だとも批判されていました。

この二つの報告に共通しているのは、オスのメス化です。佐藤さんは、日本人男性の性行動の希薄化を指摘し、子どもを作る行動がないのだから、少子化になるのは当然と言っています。佐藤さんのホームページは、生活習慣病を予防する食生活:http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayusです。