食の安全・監視市民委員会第23回総会を開催
食の安全・監視市民委員会は2025年5月17日、第23回総会を開催し、全議案を採択しました。また以下の特別決議を決議しました。
特別決議1 米不足・価格高騰に対し抜本的な政策転換を求めます
昨年夏頃から米不足が問題になり、今や消費者価格は昨年の倍にもなっています。こうした異常事態はなぜ起きたのでしょう。
国内農業はこれまでも離農や耕作放棄が相次いできましたが、近年は円安の影響も受け、輸入に頼る肥料や飼料などの価格が高騰し、一層経営が成り立たなくなってきました。さらに、生産調整が続いたこともあり、米の作付面積は10年前に比べ2割も減少しました。そのため、ここ数年、需要を満たすだけの生産ができていません。
こうした要因は採算の合わない価格にあります。2022年の農水省調査で全国の米農家の平均年間所得は1万円で、時給にするとわずか10円です。米作りは完全に赤字が続いてきました。今ようやく上がっても、生産者価格は1990年頃と同じ水準でしかありません。
食べものは生きるために欠かせないものです。気候や土地など自然条件に左右され、足りなくなってもすぐに増産できません。また、農業は国土保全や水源涵養など公益的価値があります。しかし、市場原理に任せておけば価格競争を強いられ、下落してしまいます。それは、消費者にとっても食の不安や環境悪化につながるものです。
農民が安定的に農業生産を続けるために再生産可能な仕組みが必要です。そのため、欧米などのように農家への「直接所得補償」を求めます。また、生産調整を見直し、ゆとりのある生産と備蓄体制に向けて抜本的な政策の転換を強く要求します。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同
特別決議2 有機フッ素化合物(PFAS)への総合的対策を求めます
PFASによる水汚染が全国に広がっています。アメリカではPFASの中でPFOSとPFOAについての安全な摂取量はなく0が望ましいというリスク評価のもと、水道水への水質基準についてPFOSとPFOAそれぞれで、水質検査の下限値である1リットル当たり4ナノグラムに設定し規制を始めています。一方日本では、安全な摂取量を1日当たり体重1kg当たり20ngと定め、水道水の基準をPFOSとPFOAの合計で50ngと大幅に高い値を設定しています。また食品安全委員会による安全摂取量の評価の過程では、重要な論文の差し替え疑惑が浮上するなど、科学的正しさが疑われる事態となっています。
日本でもPFASの安全摂取量の見直しと、水質基準値の早急な見直しが必要です。また現在日本では、1万種類以上あると言われるPFASについての規制は、PFOSとPFOAの2種類に限られています。また規制対象も水道水しかありません。
水道水汚染の原因となる環境中の公共用水、また水以外の大気、土壌への規制も必要です。また私たちの身の回りでは化粧品や家庭用品、工業用品に未規制のPFASが数多く使用されており、将来の汚染拡大が懸念されます。欧州連合の規制案を参考に、すべてのPFASをすべての用途において規制する政策を求めます。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同
特別決議3 私たち市民の生活も脱プラスチックに舵をきりましょう
廃棄された5兆個のプラスチックが海を漂い、海洋生物を汚染しています。近い将来海を漂うマイクロプラスチックが魚の重量を超えるおそれがあるとも警告されています。そして子どもの健康に対する重大な脅威となっています。私たちができる最低限の行動として、使い捨てプラスチックの使用は直ちにやめることが重要です。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同
特別決議4 公益通報者保護法の改正を求める決議
公益通報者保護法は、通報者に対し、解雇、降格、減給などの不利益取り扱いを禁止しています。しかし不利益取り扱いをした者に対する罰則がないので、事実上不利益取り扱いが横行しているというべきです。消費者庁の「公益通報者保護制度相談ダイヤル」が必ずしも通報者の保護に結び付いていないとの指摘があります。施行後3年の見直しに備え、直ちに次の検討会を設置し、通報経験者やマスコミ関係者も交えて議論を深めるべきです。また不利益取り扱いをした者に対する罰則を定めるなどの改正を求めます。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同
特別決議5 機能性表示食品制度を廃止すべきです
紅麴コレステヘルプの事故に見られるように、機能性表示食品は機能も安全性も事業者任せの不安定な制度です。ガイドラインを設け、事故の届出制度を作るなどの弥縫的制度改正では不十分です。当市民委員会は従前から制度の廃止を求める意見書を公表してきました。
機能性表示食品制度は直ちに廃止すべきです。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同
特別決議6 ゲノム編集食品に表示を求めます
いま、安全審査もなく、表示も必要ないまま、任意の届け出だけでゲノム編集されたトマト、マダイ、トラフグ、ヒラメが市場に出回っています。さらにエピゲノム編集など、遺伝子組み換えでもゲノム編集でもない、新たな遺伝子操作技術による食品の開発も進んでいます。遺伝子組み換え食品も含めて、これら遺伝子操作食品は、遺伝子操作の過程において遺伝子を傷つけ、想定外の変化を起こすことによって有害物質等を生ずる潜在的なリスクがあります。消費者には食品が遺伝子操作されたものか否か知る権利があり、また安全な食品を求める権利があります。
現在、岩手県議会をはじめ、多くの自治体の議会でゲノム編集食品の表示を求める意見書が採択されています。政府はこの世論を尊重するとともに、被害を未然に防ぐために予防原則に基づいた政策を求めます。
以上決議します。
2025年5月17日 食の安全・監視市民委員会第23回総会参加者一同