情報公開裁判で最高裁勝訴判決
最高裁判所・勝訴判決のお知らせ
2025年6月10日
神山美智子(弁護士、食の安全・監視市民委員会顧問)
1 機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業
機能性表示食品は、企業の責任で安全性・機能性に関する資料を収集し、これを消費者庁に届け出ることにより、食品の機能を表示できる制度です。
消費者庁は、2016年、研究機関に委託して、146品目164の機能性関与成分の分析方法に関する検証と買上調査を行いました。
そして食の安全・監視市民委員会共同代表の佐野真理子さんは、2018年東京地裁に、情報公開法に基づき、この検証報告書(平成27年度)の情報開示請求訴訟を起こしました。
地裁は22年10月に、高裁も23年に、佐野さん一部勝訴の判決を出しました。
消費者庁は控訴も上告もせず、自発的に、各品目ごとの分析方法について〇△×の一覧表を開示しました。しかしその表のコメント・メモ部分は黒塗り(いわゆるのり弁)のままでした。また本文中には、機能性表示食品制度の問題点の指摘や考察などの重要な記述があります。そこがすべて非開示でした。
そこで佐野さんは23年10月最高裁に上告の申し立てをしたのです。
2 最高裁第三小法廷による弁論と判決
弁護士は多くの事件で最高裁に上告しますが、まず却下されるのが普通です。ところがこのケースは、上告が受理され、2025年4月25日に弁論期日が開かれました。傍聴人の方も最高裁判所南門に集まってくださいました。弁論では中下裕子弁護士と佐野さん本人が意見陳述を行いました。
そして6月6日午後4時に判決言い渡しとの決定がありました。
6月6日主文は「東京高裁の判決を取り消し、差し戻す」という画期的なものでした。
消費者庁の非開示理由の概要は、「開示すると消費者庁がどの部分を中心に事後監視を行っているか、届出された分析方法の不備をどのように評価しているかなどが推知され、事業者が問題点の指摘を免れるなど悪用される恐れがあり、検証機関による忌たんのない検討結果の指摘を困難にさせる。」というものでした。
これに対し最高裁は、「開示すれば分析方法の改善を提言する資料を得られることになり、国民一般にとっても食品行政の透明性が向上することになり、信頼を高めることができる。」としたのです。
これから東京高裁で再び審理が始まることになります。
なお四谷のプラザエフで、7月8日午後2時から報告会が開かれます。
機能性表示食品データ公開訴訟報告会