食の安心・安全を脅かす貿易自由化に反対する特別決議

(食の安全・監視市民委員会第19回総会特別決議)
食の安心・安全を脅かす貿易自由化に反対する特別決議

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、各国で農産物の輸出規制や流通の停滞がおこり、国際的に穀物価格が高騰したため、食料不足に直面する人々が急増しています。また、日本でもマスク不足や食料不安がおこるなど、必要なものを輸入に依存してきたことの危険性も明らかになりました。命を守り暮らしに必要な基礎的物質の国内生産の重要性が改めて認識されました。
これまで日本は、貿易の自由化を一方的に推し進めてきました。2018年12月に環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効して以降、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(19年2月発効)、昨年1月発効の日米二国間の貿易協定と続き、さらに、昨年11月に東アジアを中心とした地域的な包括的経済連携協定(RCEP)の合意署名が行なわれ、いま国会でその承認のための審議が行われています。
これらの協定は、いずれも農産物の貿易額や自由化の水準において未曽有の大型貿易協定です。そのため、日本農業は厳しい国際競争にさらされ、輸入農畜産物が増加し、壊滅的打撃を受けています。さらに、近年は農業者数が大幅に減少し、農業産出額も減少を続けています。
これは、私たちの食の安心・安全を脅かすものです。日本の食料自給率は38%(カロリーベース)と、先進国中で最低の水準が続いています。少なくても政府が掲げた2030年の食料自給率45%の目標を達成するため、抜本的な政策転換が必要です。
また、今後予想される日米間の新たなFTA交渉では食の安全規制も大きな課題になろうとしています。すでに米国の要求に従い、2019年にBSE(牛海綿状脳症)に伴う牛肉の輸入規制を撤廃しました。また、遺伝子組み換え食品の表示制度改悪や、ゲノム編集食品の解禁も行われました。さらに、食品添加物の規制緩和や農薬規制緩和、健康食品の承認拡大など、消費者の安全を守るさまざまなルールがやり玉に挙げられ、輸出国や事業者に有利な仕組みに変えられる恐れがあります。
国連で2015年に採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は、貧困や飢餓に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受して「誰一人取り残されない社会を」と呼びかけています。その実現には、貿易拡大至上主義から脱却し、命と暮らしを最優先する秩序ある貿易ルールへと転換する必要があります。そのため、当面する日米FTAなどの通商交渉に強く反対します。
以上、決議します。

2021年4月17日
食の安全・監視市民委員会第19回総会参加者一同