２０２１年度検査だしパックのマイクロプラスチック検査報告

私たちは、日ごろの活動の視点から、食品にマイクロプラスチックが混入しているか、また、プラスチック素材の包材等の影響により、食の安全が脅かされていないかと、市販されている食品を購入し調査分析する取り組みを行っています。今年度は、「だしパック」5点を検査しました。鰯粉末、さば節、鰹節等が小袋に入っており、煮だして食するものです。検査での煮だし時間は商品の外袋に書かれている時間内で行いました。

今回は、内容物の魚類も含めたマイクロプラスチック混入の検査は1検体あたりの費用が多額で難しかったことと、煮だし用に使う小袋が、多くはプラスチック素材であり、材質の表示が義務づけられていないため、このだしを包む袋からの溶出に問題意識をもって調べました。結果は別表のとおり、うち1点からマイクロプラスチックを検出しました。

パック食品は出汁だけではありません。紅茶、麦茶各種お茶、鶏がらパックなどなど、パック入りの食品素材をパックごと煮だしたり、熱湯につけたりする食品は、増加傾向です。使用後はパックそのものがごみとなり、煮だしたお茶や、だしにはパックから溶出したマイクロプラスチックが、混入することが今回検査で分かりました。それらは飲食をすれば体内に入り込みます。マイクロプラスチックは、いずれは体外に排出されるようですが、プラスチックに使用されている可塑剤や添加剤などの化学物質が、消化器官を移動するうちに他の臓器に蓄積するという研究発表もあります。あらためて、食生活を点検する必要があるのではないでしょうか。

また、この検査依頼の前には、食品とともに熱を加えるパック素材の材質表示を義務づけるべきという趣旨の意見書を、食品安全委員会と、消費者庁に提出しました。内容と回答は食の安全・監視市民委員会のホームページをご参照ください。

4月1日より「プラスチックに係わる資源循環の促進等に関する法律」（略して、プラスチック資源循環法）が施行されますが、これは主にプラスチックのリサイクルや材質の変更を主眼としており、プラスチック製品そのものの発生抑制を期待することは難しいと思います。私たちは、暮らしを見直し、不必要なプラスチック製品は買わない、使わないを実行して、これからもっと汚染が広がるマイクロプラスチック・ナノプラスチック問題に、向き合い、次の世代のために必要な対策を講じていかなければならないと思います。

最後に、今年度も、プラスチック検査にご寄付下さった皆様に改めて御礼申し上げます。

（守屋　由紀枝）

2021年度だしパック調査一覧から一部抜粋

試験結果    (単位:μｇ/包)　ND:不検出(検出限界:PE 3μｇ/包、その他1μｇ/包)

PE:ポリエチレン、NY:ナイロン、PET:ポリエチレンテレフタレート、PC:ポリカーボネート、PS:ポリスチレン、PP:ポリプロピレン、PMMA:ポリメタクリル酸メチル、PVC:ポリ塩化ビニル

※検査分析はユーロフィン・フード・テスティング株式会社 ノルウエーラボに依頼

検体の表示とパックの材質調査結果

※Pulp:パルプ、Co-:コポリマー(共重合体)

謝辞

この調査は、生活協同組合パルシステム東京の市民活動助成金と会員・市民の皆さんからいただいた寄付金によって実施されました。厚く御礼申し上げます。