原発汚染水の海洋投棄計画の中止・撤回を求めます

23FSCW第4号
2023年8月14日

内閣総理大臣 岸田文雄様
経済産業大臣 西村康稔様
環境大臣   西村明宏様
消費者庁長官 新井ゆたか様

食の安全・監視市民委員会
共同代表 佐野真理子 山浦康明

原発汚染水の海洋投棄計画の中止・撤回を求めます

 政府は、福島第一原子力発電所でたまり続ける汚染水対策として、海水で薄めて海に放出すると決定しました。

しかし、汚染水の貯蔵は未だ限界に達しているわけではなく、また土中に埋める方法など、海洋投棄以外の手段を考慮していません。
投棄される汚染水には、トリチウム・炭素14が残っています。その他のストロンチウム・ヨウ素などの残留も懸念されており、海水で薄められても、放射性物質が環境に拡散されるだけで、ゼロになるわけではありません。海洋投棄は、食物連鎖の過程で生態系に甚大な影響を与え、食料となる魚介類や海水中のすべての生物に汚染が及ぶ懸念があります。福島県漁連をはじめ、多くの団体・市民が「安全・安心は確保されない」として、強く反対しています。
人類を含む多くの生物が海の生き物によって命をつないでいます。
こうした計り知れない影響を考えれば、地上での貯留、地下埋設など、海洋投棄以外の手段を慎重に検討すべきです。
私たち食の安全・監視委員会は、原発汚染水の海洋投棄計画に断固反対するとともに、次のような理由から洋投棄計画の中止・撤回を求めます。

1.政府は「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とした地元漁業者等との約束を反故にしようとしています。何よりも、全国の消費者や市民科学者・専門家の間で反対の意見が高まっていることを無視しています。

2.ALPS(多核種除去設備)は原発事故で放出される数百種類の人口放射性物質のうち、62物質を不十分に処理するだけであり、トリチウムや炭素14などは処理できずに放出されます。原発を推進する立場のIAEA(国際原子力機関)は、海洋投棄が少なくとも30年以上継続されることへの環境影響評価の必要性を何ら指摘していません。目先のことだけを重視した不十分なIAEAの調査を海洋投棄の根拠にするのは重大な問題です。

3.放出される汚染水は、メルトダウンした原子炉内の核燃料や融け落ちたデブリに直接触れて発生しているものです。そのような汚染水の海洋投棄は世界初のものであり、海外の排出例と同列には扱えません。今回の海洋投棄は環境・健康面での不測の事態発生も考えられる危険な措置であることを重視すべきです。

4.海洋投棄以外にも汚染水対策として市民団体や専門家が、広域遮水壁建設構想や、汚染水のモルタル固化、さらに、新たな処理技術の確立までの保管延長・継続などの案が提案されています。最も安易でコストが安い海洋投棄を実施することは将来世代に対しても無責任な責任転嫁となります。早急に海洋投棄計画を中止・撤回し、幅広い国民的議論の中で、各種の、別の手段を検討していくべきです。

以上