食品添加物の新規指定に関する消費者庁等の姿勢について

2010年10月27日
消費者庁担当大臣 岡崎トミ子 様
消費者庁長官 福嶋 浩彦 様
消費者委員会委員長 松本恒雄 様
提出者
反農薬東京グループ
代表 辻 万千子
食品添加物の新規指定に関する消費者庁等の姿勢について
私たちは、食品の安全を始めとする消費者問題に取り組んできた団体・個人の集まりです。昨年、消費者庁及び消費者委員会が発足して、消費者の立場からの行政がなされることになり、多いに期待し、見守ってきました。しかしながら、現実の消費者庁、消費者委員会の動きを見ていると、非常に不安になります。消費者の利益を守るという立場がどこかに忘れられて、形式のみを重要視していると思わざるを得ません。例を挙げます

10月4日、第4回消費者委員会食品表示部会が開かれ、議題の一つに「食品添加物の指定に伴う食品衛生法施行規則の改正について」がありました。防カビ剤「フルジオキソニル」を食品添加物として指定するので、りんご、もも、びわ、あんず、おうとう、キウィー、ざくろ、すもも等11種類の作物に防かび剤の表示義務を拡大するという内容でした。

食品添加物の新規指定や、残留農薬基準の設定に関して、消費者庁は意見を言うことができます。(注1)しかし、フルジオキソニルの指定に関しては、消費者庁及び消費者委員会は新規食品添加物が消費者に必要かどうか、一番大事な点を検討するのを放棄して、始めから消費者委員会の下部組織である表示部会に諮問して、表示問題しか議論できないようにしました。つまるところ、厚労省のいいなりになったわけです。

消費者庁・消費者委員会に対する国民の期待は大きいと思いますが、このような対応では、期待はずれと言わざるを得ません。消費者目線で本来の任務を果たしていただきたいと思います。そこで、消費者の視点に立った消費者庁等のありかたについての要望と、事実関係についての質問をいたします。透明性の確保のためにも、今後の消費者庁等の信頼確保のためにも丁寧な回答をお願いいたします。

消費者の視点に立った消費者庁等のあり方についての要望
1、消費者庁、消費者委員会は食品添加物、及び残留農薬基準に関して、これ以上の緩和をしないという基本的な方針を定め、公表していただきたい。2,消費者庁は厚労省からの協議の申し入れがあった場合、どのように対応したか公表し、その段階で国民の意見を聞くようにしていただきたい。

3,食品表示部会は、消費者委員会令第1条によって、食品表示部会の結論が消費者委員会の結論とすることができる、となっており、非常に重要な役割を持っています。ところが、 食品表示部会設置・運営規程 (平成21年12月1日消費者委員会決定)第3条の所掌では、検討範囲が表示に限られておいるため、消費者の立場に立った食品の安全性などの審議などは不十分です。従って、部会での議論を表示のみに限定せず、必要な資料はすべて公表し、総合的な議論ができるようにするか、消費者委員会で消費者庁及び消費者委員会設置法第6条第2項に基づく内容について審議・決定した後に食品表示部会に諮問する体制にしていただきたい。

事実関係についての質問
質問1 フルジオキソニルに関する消費者庁の方針はいつどこで決まったのか
食品添加物の指定に関しては、食品衛生法第65条の2項によって、「厚生労働大臣は内閣総理大臣とあらかじめ協議しなければならない」と定められています。内閣総理大臣は消費者庁長官に委任すると定められているため、この件についてあらかじめ消費者庁との協議があったはずです。現在、厚労省は食品添加物の新規指定に関して、基本的にメーカーからの申請があれば審査することになっており、安全性に問題がないとなれば、認可するという流れになっています。しかし、消費者委員会は食品安全委員会で安全性が確認されたとしても、消費者の不利益につながるという理由でグルコバスターカプセルの申請を却下したことがあります。

(1)フルジオキソニルの食品添加物の指定に関して、厚労省から連絡があったのは、いつで、どの部署が受けたのか。

(2)消費者庁は厚労省からどのような資料を提供されたのか。

(3)それについて、消費者庁のどこの部署がどのように検討したのか。その会議録とともに、説明を願いたい。

(4)消費者庁が消費者委員会に諮問した内容は、フルジオキソニルの食品添加物の指定が前提になっている。厚労省のパブコメ中でまだ決定されたものでもないものを、決定済みのような扱いにした根拠は何か。また、パプコメの内容と検討結果を、消費者委員会に情報提供せずして、決定できるとした根拠は何か。

(5)フルジオキソニルに関しては、残留農薬基準と食品添加物の規格基準が設定されているが、どう違うのか。たとえば、基準を超えるという違反があった場合、誰が責任をとるのか。

(6)果実用防カビ剤はすでに5剤(ジフェニル、OPP、OPPナトリウム、TBZ、イマザリル)が認可されている。フルジオキソニルの認可申請者は誰で、申請理由はなにか。厚労省の認可理由はなにか。現行の食品添加物防黴剤はそのまま認可されるのか。

(7)消費者庁は、収去検査をする権限を有するが、食品添加物について、いままで、どのような検査をしてきたか。検査結果があれば、公表してほしい。

(8) ポジティブリスト制度実施後、行政機関等により、フルジオキソニルの分析が実施された食品別の検体数と検出数、検出範囲、検出限界値、残留基準違反件数とその検出値を年度別(2006年から2010年)に報告願いたい。

(9)フルジオキソニルを食品添加物として使用している国と対象果実を教えてほしい。 また、フルジオキソニルで処理された果実の輸入量は年間どの程度と予測されるか。作物別・国別に教えていただきたい。

(10)果実などの防黴剤使用表示は、カートンのみとなっているが、消費者の立場に立った場合、ばら売りの果実について防黴剤処理しているか否かはどのように知ることが可能か。消費者がばら買いをした際にも分かる表示が必要ではないか。
また、防黴剤使用した果実のジャム、ジュースほか加工製品にも表示が必要でないか。

(11)現在、認可されている防カビ剤の店頭での表示がきちんとなされているか、調査をすべきと考えるがどうか。

質問2 食品添加物等に関する消費者庁の姿勢について
食品添加物は、メーカー等が申請し、そのデータをもとに厚労省が食品安全委員会に安全性の評価を依頼し、ADIが設定される。それを元に厚労省が規格基準を設定することになっています。
食品添加物は、製造、流通、販売等の業者の利益のためにあり、その結果、消費者は、不必要な化学物質を知らない間に摂取させられることになります。したがって、「食品添加物は,極力その使用を規制すべきである」との1972年国会付帯決議が定められています。
新しい食品添加物を指定する場合、単独の物質の安全性の評価だけで決められ、複数摂取の相乗毒性などについてはほとんど調べられていない現状に対し、摂取する消費者の立場から食品添加物の増大に歯止めをかけ、かつ削減の方向をめざすよう働きかける消費者庁の役割があると認識しています。(1)消費者庁・消費者委員会は食品添加物の新たな指定に関する基本的方針はあるのか。基本方針を策定している場合には、その根拠と資料を示していただきたい。(2)消費者庁・消費者委員会には新規食品添加物について厚労省と協議し、意見をいう場があるにもかかわらず、厚労省が新たに食品添加物を指定すると決めた場合、その下請けになって表示をどうするかしか審議しないのはどういう理由か。(3)消費者委員会は、食品安全委員会がヒトへの影響がないとした量であったとしても、消費者の不利益になるとの理由で、健康食品の認可をしなかった例がある。今回、一切審議しなかった理由は何か。

(4)厚労省は、『食品添加物は、食品衛生法(昭和22年法律第法律第233号)第4条第2項により、「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物」と定義されている。収穫後に使用されたことが明らかであり、かつ、かび等よる腐敗・変敗の防止の目的で使用されている場合には、「保存の目的」で使用されていると解され、添加物に該当する。』としているが、農薬のポストハーベスト使用は、農薬取締法の農薬登録に適用がなければ、国産農作物には使用できない。
一方、食品添加物として認可されると、国産農作物にも適用されることになる。このため、食品添加物認可は減らすべきだという意見があるが、消費者庁・消費者委員会はどう考えるか。

なお、ご回答は、岡崎消費者庁担当大臣から直接伺いたく要望いたします。
よろしくお取りはからい下さいますようお願いいたします。

賛同団体(順不同)
サスティナブル21
アレルギーを持つ人のひまわりの会
日本消費者連盟関西グループ
各務原ワークショップ
ふぇみん婦人民主クラブ
島根くらしといのちのネットワーク
日本消費者連盟
食の安全・監視市民委員会
ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
やさい畑
食政策センタービジョン21
日本有機農業研究会
反農薬東京グループ
(2010年10月22日現在)
(参考 食品衛生法)
第六十四条  厚生労働大臣は、第六条第二号ただし書(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)に規定する人の健康を損なうおそれがない場合を定めようとするとき、第七条第一項から第三項までの規定による販売の禁止をしようとし、若しくは同条第四項の規定による禁止の全部若しくは一部の解除をしようとするとき、第九条第一項の厚生労働省令を制定し、若しくは改廃しようとするとき、第十条に規定する人の健康を損なうおそれのない場合を定めようとするとき、第十一条第一項(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)に規定する基準若しくは規格を定めようとするとき、第十一条第三項に規定する人の健康を損なうおそれのないことが明らかである物質若しくは人の健康を損なうおそれのない量を定めようとするとき、第十八条第一項(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に規定する基準若しくは規格を定めようとするとき、第二十三条第一項に規定する輸入食品監視指導計画を定め、若しくは変更しようとするとき、又は第五十条第一項に規定する基準を定めようとするときは、その趣旨、内容その他の必要な事項を公表し、広く国民の意見を求めるものとする。ただし、食品衛生上の危害の発生を防止するため緊急を要する場合で、あらかじめ広く国民の意見を求めるいとまがないときは、この限りでない。○2  都道府県知事等は、第二十四条第一項に規定する都道府県等食品衛生監視指導計画を定め、又は変更しようとするときは、その趣旨、内容その他の必要な事項を公表し、広く住民の意見を求めなければならない。○3  厚生労働大臣は、第一項ただし書の場合においては、事後において、遅滞なく、広く国民の意見を求めるものとする。○4  第一項及び前項の規定は、内閣総理大臣が第十九条第一項(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)に規定する表示についての基準を定めようとするとき、並びに厚生労働大臣及び内閣総理大臣が指針を定め、又は変更しようとするときについて準用する。
第六十五条  厚生労働大臣、内閣総理大臣及び都道府県知事等は、食品衛生に関する施策に国民又は住民の意見を反映し、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るため、当該施策の実施状況を公表するとともに、当該施策について広く国民又は住民の意見を求めなければならない。

第六十五条の二  第六十四条第一項本文に規定する場合には、厚生労働大臣は、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。

○2  内閣総理大臣は、第十九条第一項(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)に規定する表示についての基準を定めようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣に協議しなければならない。

○3  厚生労働大臣は、第十一条第一項(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)又は第十八条第一項(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に規定する基準又は規格を定めたときその他必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、第十九条第一項(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)に規定する表示についての基準を定めることを求めることができる。

第六十五条の三  厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するため、必要な情報交換を行うことその他相互の密接な連携の確保に努めるものとする。

以上