特別決議 「東京電力福島第一原発過酷事故による放射能汚染対策と予防原則に則った 被曝回避策等の実施ならびに全原発の廃炉を求めます」

食の安全・監視市民委員会総会特別決議
「東京電力福島第一原発過酷事故による放射能汚染対策と予防原則に則った
被曝回避策等の実施ならびに全原発の廃炉を求めます」
私たちは、東京電力福島第一原発過酷事故(以下、福島原発事故)により放射線被曝を余儀なくされ、生活と仕事の基盤を突如根底から奪われ困窮を極めておられる人びとに心痛めるとともに、危険な状態のなか不眠不休で福島原発事故の収束・廃炉作業と安全管理に当たられている原発作業従事者の皆様方に心より敬意を表します。
日本では公衆の年間被曝限度は1ミリシーベルト(mSv)と定められています。しかし、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告等に依拠する政府と原発推進「科学者」たちは、福島原発事故後直ちに、年間被曝線量が100 mSv以下なら健康に問題はないとし、年間被曝限度を子どもたちにまで20 mSvに引き上げました。しかし、原発事故が起きたからといって私たちの放射線耐性が急に強まることはありません。
また、2011年3月17日、政府は穀類や野菜、肉などの暫定規制値を500ベクレル/キログラム(Bq/kg)としました。原発内では、放射性セシウム(Cs-137)が100Bq/kgを超えれば低レベル放射性廃棄物であり、人体に有害であることが分かっているため、管理資格を持つスタッフが黄色いドラム缶に密封し専用保管庫に置かなければならないことが法律で決まっています。ですから、私たちは福島原発事故直後から危険な低レベル放射性廃棄物並み食品を食べさせられたのです。
2012年4月1日、穀類など一般食品の新基準値は100ベクレルとなりました。厚労省などは、新基準値に基づき行政的に農林水産物の放射能汚染検査を日々実施しており安全が確認されていると喧伝します。しかし、今でも出荷制限品目が福島県内をはじめ岩手、宮城、茨城、栃木、千葉、埼玉、群馬、東京等々の諸地域に存在します。また、日々の農林水産物の検査件数は福島県内でさえ約100件ですから、ほとんどが無検査で流通しています。これでは、風評被害を峻別する術がありません。
しかも、今年3月19日、厚労省は「農畜水産物等の放射性物質検査について」を都道府県知事等に通知しました。これは、重点検査の大幅見直しであり、調査対象品目を132種から98種に減らすもので、食の安全に逆行します。
こうした問題の背景には、飲食と吸気によって体内に取り込まれる放射性セシウムやプルトニウム、ストロンチウムなどが発するアルファ(α)線とベータ(β)線による長期低線量内部被曝のリスクを認めようとしない政府やICRPなどをはじめとする原発推進者たちの偏った姿勢があります。さらには、政府の隠蔽体質による似非「収束宣言」と公衆の年間被曝限度の超法規的な引き上げならびに、本来的に未熟な巨大装置である原発に依存しつづける政府の姿勢があります。
昨年6月24日の参議院環境委員会の『原子力規制委員会設置法案に対する附帯決議』では、「放射線の健康影響に関する国際基準については、ICRP(国際放射線防護委員会) に加え、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の基準についても十分検証し、これを施策に活かすこと。また、これらの知見を活かして、住民参加のリスクコミュニケーション等の取組を検討すること」が謳われています。
こうしたことから、私たちは、事故責任者である国に対し、農林水産物や食品等の放射能汚染対策に万全を尽くすことを求めます。
また、加害者の東電と共に、被災者住民の避難する権利を保障し被曝住民の健康と暮らしを守るために最善を尽くすとともに、被災者に対する万全の賠償・補償および生活・経営の再建支援を迅速に進めることを要求します。
具体的な要求項目は、以下のとおりです。

1. 農林水産物など飲食物の放射能汚染検査については、徹底的に高密度で実施し、その公表とベクレル表示制度を確立すること。

2. 強制移住地域ならびに放射能汚染のひどい移住権利地域においては農林水産物生産を中止し、国と東電による全面的な補償を行うこと。

3. 予防原則に則り、以下に示す被曝回避策を速やかに実施すること。
(1)年間被曝線量が5 mSvを超える地域(チェルノブイリ原発事故の強制移住地域)の住民に対する、国家的な集団移住。
(2)年間被曝線量が国の定める一般公衆の年間被曝限度である1 mSvを超える地域(移住権利地域)の住民のうち移住を希望する人びとに対する、国家的な移住。
(3)特に放射線感受性の高い子どもたちに対する、国家的な集団疎開などの緊急措置。

4.非汚染地域における安全な食品の大増産運動を、被曝地の農林漁民の集団移住等と併せて実施すること。

5.2011年12月16日、当時の野田佳彦首相による「冷温停止状態」を理由とする似非「収束宣言」を速やかに撤回すること。

6.稼働中の原発の稼働中止と全原発の廃炉を決定し、直ちに廃炉に向けた作業を開始すること。

以上、決議します。

2013年4月20日
食の安全・監視市民委員会第11回総会参加者一同