食品の新たな機能性表示制度に係る食品表示基準(案)についての意見

食品の新たな機能性表示制度に係る食品表示基準(案)についての意見

食の安全・監視市民委員会

 【総括意見として】
今回のパブコメは、食品表示基準(案)の中の「機能性表示制度」に関する部分だけが対象となっていますが、機能性表示制度全体についてのパブコメが実施されていないため、制度全体に関する意見を総括意見として述べておきます。

1)今回の食品の新たな機能性表示制度は、規制改革実施計画に関する閣議決定を受けて検討実施されるものです。食品の新たな機能性表示制度を、食品表示基準だけで定めることには無理があります。関連する法律(薬事法、健康増進法、景品表示法)の施行規則などの変更も同時に進める必要があります。その各省庁とのすり合わせをした結果の全体像を、消費者庁はまず示すべきです。

2)また食品の機能性を企業の責任において表示できるものとする新制度は、単なる食品表示の問題だけでなく、優良誤認など問題も含む場合が多いです。アメリカの制度を見習い、米連邦取引委員会(FTC)のように消費者庁の表示対策課と連携し、機能性表示の科学的根拠を景表法での優良誤認の根拠と連動させて、科学的根拠が不十分にも関わらず機能性を表示している健康食品の取締りの強化を図るべきです。

3)食品の新たな機能性表示制度における検討会での国の関与の在り方の資料では、食品表示法の「申出制度」で監視執行体制を補完するとあります。しかし食品の機能性表示は、他の食品表示と異なり、事業者の悪質な意図的虚偽表示を伴うケースが多いのが特徴です。これまでの「いわゆる健康食品」については、明らかに科学的根拠がないものが機能性を暗示して販売されており、そこへの取締りが十分ではありませんでした。消費者庁の職員数など人的能力の不足を補うためにも、今回新制度を作るにあたっては、食品の機能性表示に限定して、単なる「申出制度」ではなく、申出による調査結果の公表を必須とする制度を作るべきです。その結果国民全員が監視役となるという新制度の趣旨が活きることになります。

4)また今回の機能性表示制度は、適格消費者団体による差止請求制度の対象となっていないとの説明をされているようですが、速やかに対象とするように、消費者団体訴訟制度を改善すべきです。

【2条について】
機能性表示食品の定義において、「保健機能食品を使用対象としている添加物を用いていないものに限る」とあります。機能性表示食品は、保健機能食品の中に定義されるものと判断しますが(第九条九による)、それなのに保健機能食品に認められる添加物が使用できないというのが矛盾します。これは厚労省で定める食品添加物の使用基準とのすり合わせができていないことによるものです。新制度を導入するに際しては、関連する他の基準とのすり合わせを十分に行ったうえで制度を立ち上げるべきです。

食品表示基準では容器包装に対する表示しか対象としていません。広告宣伝での機能性表示に関しては、どのような制度で取り締まるのかが不明です。「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」では、「科学的根拠情報については、容器包装への表示以外の手段による詳細な情報開示を行うことが適当」とありますが、それらの表示についてをどの法律で規制するのかが不明なままです。
このままでは、従来からの「いわゆる健康食品」のように広告宣伝で機能性を表示または暗示している食品について、容器包装にさえ表示しなければ食品表示基準違反とは ならず、有効な取り締まりができない可能性があります。
閣議決定の趣旨に則してアメリカの制度を見習って機能性を表示させる制度を作るというのであれば、アメリカの連邦取引委員会(FTC)の取組なども考慮して、消費者庁の表示対策課と連携して、景表法など宣伝・広告の機能性表示を規制する法律と連動した制度設計をしたうえで施行すべきです。

【3条「科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該食品が有する機能性」について】
科学的根拠の判断基準となる「システマティック・レビュー」の詳細や「Totality of Evidence」の判断の是非などの詳細が不明なままです。システマティック・レビューを企業の自己責任に任せた場合、「機能性がある」「機能性がない」の間にある「機能性があるかもしれない」「機能性が無いとは言えない」成分について、「機能性あり」と判断してしまう方向にバイアスがかかるのは必然でしょう。そうしたバイアスを事前にどのように歯止めをかけるのかについて、上記の概念についての要件の整備が必要です。

今後Q&Aを作成される予定だと思いますが、こうした科学的根拠に関わる説明は、消費者庁内部で作成するものではなく、専門家を入れた開かれた検討会で作成するべきです。結果について広く一般の意見聴取を行うべきです。

また、この判断基準を景表法の優良誤認の判断基準と連動させることで、科学的根拠が不十分な健康食品の表示の取締りの強化に活用すべきです。