newsletter No.35

No.35

2012年12月17日

 目  次

・緊急院内学習会報告「アメリカ産牛肉輸入にNO!~食品安全委員会のBSE評価書はとんでもない」
・EUの新しい食品表示規則、流通の円滑化から消費者保護重視へ転換
・新食品表示法(仮称)について
・食の安全・市民ホットライン発足2周年記念シンポジウム―見過ごされがちな問題 ホットラインに期待
・黒塗りの放射線食品照射の安全性研究―照射食品反対連絡会が集会を開き追求
・連載/食品と法律(13)
・GM作物のない世界を取り戻すための世界会議に参加して
・連載/やさしい「農」生物学(28)
・FSCWの活動と食品安全委員会の動き
・浅漬けのO157対策、保存料添加より堆肥の衛生基準作りを
・FSCW運営委員会報告
・新食品表示制度検討に向けたシンポジウム案内

巻頭言

 大月書店から発刊された「『技術と人間』論文選 問いつづけた原子力1972-2005」を読みました。500頁の中に、36本の論文が収められており、帯には「私たちは何を学ばなかったのか」と書いてあります。

 解題 福島第一原発事故と『技術と人間』を、この論文選の編者で、当時の編集者でもあった、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表の天笠啓祐さんが書いています。天笠さんは食の安全・監視市民委員会の運営委員でもあります。最初の部分を引用してみます。

 「本書の主役は雑誌『技術と人間』である。同誌は、原子力の危険性、事故の可能性、いったん事故が起きた際の被害の深刻さを訴えつづけた。その姿勢は、創刊号から終刊号までの34年間、変わらず貫かれたものである。大量の放射能を放出する原発事故は必ず起きる。ここで取り上げた論文の執筆者はもちろん、『技術と人間』に登場した、原発問題を論じた人たちのほとんどすべてが、警告していた。そして私たちは2011年3月11日を迎えた。」

 1997年5月号の「チェルノブイリ原発事故によるその後の事故影響」と題する今中哲二氏(京都大学原子炉実験所)の論文は、事故後1週間もたたない時期に発表されたというフランスの物理学者ベラ・ベルオーク氏のことばを紹介しています。それは「この大災害の被害者数の評価を最大限に減らすために、後日専門家たちの国際的企みが行われるであろう。」というものです。私たちは今、東京電力福島第一原子力発電所の被害を、できる限り低く評価する専門家たちの企みを目の当たりにしています。

 このように良心の砦であった『技術と人間』を廃刊に追い込んだ私たちの社会は、必然的にあの犯罪にも等しい事故を招いたのだと思います。
 このニュースが皆さんのお手元に届くころには、衆議院議員選挙も終わり、新しい政権が発足していることでしょう。その結果を現時点で予測することはできませんが、脱原発を主張する議員が多数当選していることを祈っています。

(神山美智子)