newsletter No.45

No.45

2015年6月30日

 目  次

・機能性表示食品アンケート結果について
・総会記念講演会
-健康食品にだまされないために消費者が知っておくべきこと!
-導入が延期された“健康マーク”
・やさしい「農」生物学 − 食の安全・安心の基礎として 東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故と食・農・子ども(14)
− ICRP(国際放射線防護委員会)とECRR(欧州放射線リスク委員会)−
・食品と法律(19) 損害賠償請求権と除斥期間
・食の安全・監視市民委員会第13 回総会報告
・トピックス TPP 交渉、漂流か?

巻頭言

 カンヌ映画祭で審査員賞をもらった「そして父になる」の是枝裕和監督が書いた『雲は答えなかった』を読みました。水俣病裁判にかかわった環境庁、山内豊徳企画調整局長の自死についてのドキュメンタリーで、20年ぶりに改題復刻したものです。この本は、1991年3月、深夜にテレビで放送された『しかし・・・福祉切り捨ての時代に』というドキュメンタリーにさらに取材を重ねて書いたものだそうです。
当時裁判所がチッソと熊本県と国に和解勧告をしており、国だけが拒否していたのです。
当時の朝日新聞は、「水俣行政の板挟み」「救済策巡り心労重なる」「和解拒否の批判重圧に」などと社会面トップで取り上げたそうです。
 しかし私がこの本でもっとも興味を引かれたのは、「環境庁はもともと発足した時点から各省庁の寄り合い所帯としてスタートしていた。いわゆる幹部といわれる課長以上のポストはこの時点ではすべて他省庁出身者が占めている。」という記載です。
そして、Tさんという記者の言葉が紹介されています。「要するに環境庁では誰も老後の面倒を見てくれない、ということですよ。大蔵省から環境庁へ来る人はいわば落ちこぼれ、次官レースに負けた人ばかりですからね。ほんとに仕事しない人ばかりで。」「官僚が一般的に評価される要素は大きく分けて三つある。一つは対自民党。自民党幹部に良く思われているかどうか、二つ目は対他省庁。つまり根回し、持ちつ持たれつの関係をどうつくっていけるかということ。三つ目は対マスコミ。将来、次官から政界へ打って出ようとする人間は良く書いてもらおうと思って、記者達とのつき合いを密にしていく。」
「大蔵省は水俣病訴訟について、患者に対する多額の補償金などとんでもない、という立場である。そうなると大蔵省出身者は出身省庁の意向にそった環境行政を目指す。環境庁に骨を埋める覚悟をしている人間ならともかく、やがては大蔵省に戻るか、大蔵省の関連団体に天下りしようと考えているのであればそうするのが官僚の常識である。」という記述もあります。
これをそのまま、消費者の味方として発足した消費者庁に当てはめて考えるのは侮辱でしょうか。

神山美智子(代表)