原子力発電所事故による汚染水海洋放出決定に断固抗議し、撤回を求めます

21FSCW第1号
2021年4月20日

内閣総理大臣  菅義偉様
復興担当大臣  平沢勝栄様
食の安全担当大臣  井上信治様
経済産業大臣  梶山弘志様
環境大臣  小泉進次郎様

原子力発電所事故による汚染水海洋放出決定に断固抗議し、撤回を求めます

食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
(公印省略)

 政府は4月13日、福島第一原子力発電所事故により発生した放射能汚染水に対し、海洋放出することを決定しました。その内容は、これまで原発敷地内に一千基を超えるタンクに貯められた大量の汚染水をはじめ、今後もメルトダウンで熔け出た核燃料(デブリ)を冷却し続ける高濃度放射性物質を含む汚染水を2年後から、30年以上にわたって海洋に放出するというものです。
政府はこの決定に際して、放出するのは「汚染水」ではなく「処理水」であり、放出にあたっては十分に海水で「希釈」し、飲料水以上の安全性を確保する基準とする、生産者が「風評被害」を受けた場合には東京電力に十分な賠償を課していく、とし、人の健康上、問題がないかのように説明しています。またその安全基準についても国際機関の基準を緩和しそれを錦の御旗にしようとする動きもみうけられます。
しかし、言葉でどんなにごまかそうとも、海洋放出される汚染水は世界で初めてデブリを冷やした水を含むものであり、きれいな「処理水」ではありません。放出される放射性物質の総量は膨大であり、どんなに「希釈」しても総量自体が減少することはありえません。しかも生態系での濃縮汚染の問題を考慮しておらず、あまりにリスクを無視した決定と言えます。魚介類などの生鮮食品やそれを素材とする加工食品への汚染は回避することはできません。
政府は「風評被害の発生防止に務める」としていますが、「風評被害」とは「誤った・不正確な情報に基づく被害」を意味するもので、汚染水による人の健康被害と生態系汚染の可能性は、多くの専門家が指摘するところです。政府の説明は生産者と消費者を分断するもので、事故の真の責任が国と東京電力にあることをごまかす内容です。
食の安全・監視市民委員会は、福島県内はじめ全国の消費者・市民からの反対意見や、市民団体などが提示した代替案の検討を無視してきたこれまでの政府の姿勢を問題視し、政府の唱える「食品に関する消費者へのリスクコミュニケーションの推進」及び「情報開示」には何らの実効性も信頼性もないものと考えざるを得ません。

以上の点から、私たちはこのような事故が二度と起きないよう脱原発を求め、海洋への汚染水放出に断固反対を表明するとともに、この決定自体の撤回を求めます。

 以上