景品表示法を抜本的に改正し、不当表示等の迅速な排除と消費者被害回復を求める意見書

21FSCW第2号
2021年5月28日

消費者及び食品安全担当大臣  井上信治様
消費者庁長官         伊藤明子様
消費者委員会委員長      山本隆司様

食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

景品表示法を抜本的に改正し、不当表示等の迅速な排除と消費者被害回復を求める意見書

不当表示等を排除し、消費者の利益を擁護する景品表示法の運用は、消費者が付託した消費者庁および各自治体の重要な法執行権限です。公正・自由な市場創設・契約社会の前提でもある不当表示等の排除については、デジタル社会の進展とともに、いっそうスピーディさが求められます。
しかし、消費者庁創設以降、課徴金制度と返金制度の導入や、打ち消し表示・スマホ表示の法的考え方などが提示されたものの、それら種々の制度等の実効性については疑問が多く、悪質表示の排除は遅れていると思わざるを得ません。健康食品に目立つ「体験談」のように、「打消し表示に関する実態調査報告書」で消費者庁が提示した「考え方」すら守られていない表示が横行しています。
私たち「食の安全・監視市民委員会」と当市民委員会に設置した「食の安全・市民ホットライン」は、不当表示等への改善活動に取り組むことを通し、表示問題解決の前提に制度改善の必要性があることを実感しています。早急に景品表示法に関する法制度改正への検討開始を求めます。少なくとも、以下の4点について要望します。
ご多忙のところ恐縮ですが、郵送でもメールでも構いませんので、6月25日(金)までに文書でご回答をお願いいたします。

1. 消費者庁設置に伴い解消された「申告制度」を復活させること
景品表示法が消費者庁に移管される前は、法違反の表示を疑って届け出る消費者に対し、調査結果等を伝える「申告制度」がありました。
現在は「情報提供制度」として消費者から疑義情報の申出を受け付けてはいるものの、その情報に基づき消費者庁が取り組んだか否か、また調査の結果については、消費者庁は情報提供者に通知しなくてもよい制度となっています。消費者庁発足とともに、この制度が申告制度に替わって導入されたわけですが、これは明らかに消費者の権利を踏まえない後退した施策であり、早急に、申告制度の復活を求めます。

2. 不実証広告規制制度の審査の透明性を確保すること
景品表示法では、「効果・効能表示」について事業者に客観的データの提出を求め、そのデータが請求後概ね15日以内に提出されなかった場合、あるいは、提出された資料が客観性・合理性に欠ける内容だった場合には、当該表示を不当表示とすることができる規定があります。これは「不実証広告規制」として、健康食品などの「効果・効能表示」の不当性への判断に運用されてきました。不当表示を迅速に排除する措置ですが、事業者がどのような資料を提出し、消費者庁がどのような理由から客観性・合理性に欠ける判断をしたのか、消費者にとっては明確ではありません。より透明性を確保するために、不実証広告規制に関する情報開示のあり方を検討することを求めます。

3.違反表示については表示改善だけではなく、表示に合わせた商品・サービスの実態改善を命令できるよう、運用の積極化を図ること
景品表示法では不当表示と判断した場合、当該表示の排除と表示の改善を事業者に指導・命令することになります。しかし消費者は表示を信じて商品やサービスを購入したので、表示改善の措置とは別に、表示に適合する商品・サービスへの改善命令を出せることも明確にすべきです。実際に、2021年5月25日の報道によると、消費者庁は携帯電話の販売をめぐり、表示と契約内容の実態にズレがあることを示し、大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)に対し、表示改善ではなく、契約内容の実態を表示に合わせるよう景品表示法に基づく改善を指導しました。
これまでは、表示通りの成分が含まれていなかったなどの例のように、表示の改善命令が主体でしたが、商品の実態を表示に合わせて事業者に改善させ、消費者の原状回復を図るようにすることも消費者利益に適うことを法運用上の措置として明確にすべきです。

4.課徴金制度と返金制度の抜本的改正を図ること
現在の課徴金制度による課徴金額は違反表示による商品・サービス売上額の3%を基準としています。この課徴金額では不当利得を吐き出すことを目的とした課徴金制度としては低すぎます。また、不当利得の排出だけでなく、予防措置としての効果を持たせるためにも、課徴金算定率の引き上げが早急に求められます。
また、課徴金が国庫に納められ、直接消費者にわたらないことから、消費者の被害回復ができないとして新たに消費者への返金制度が導入されましたが、その活用が未だにわずか数件であることも問題です。返金制度に基づく返金の実施を事業者に命令できるようにするとともに、課徴金同様に、返金算定率を引き上げるなど、制度の抜本的改正が必要です。

以上