放射能汚染食品への対応に対する抗議と申し入れ

2011日消連35号
11FSCW第29号
2011年12月27日
厚生労働大臣
小宮山 洋子 様

特定非営利活動法人 日本消費者連盟
共同代表 天笠 啓祐
古賀 真子
真下 俊樹
山浦 康明
食の安全・監視市民委員会
代表  神山 美智子

抗議と申し入れ
 厚生労慟省のこれまでの放射能汚染食品への対応に強く抗議し、この度提示された食品に含まれる放射性物質の規制値の再検討を求めます。
抗議
 まず、貴省が、現時点に至るまで、1キログラムあたり500ベクレルという余りにも緩やかな暫定規制値を、長期に適用したことに対し、強く抗議します。
2011年12月20日、貴省は、食品に含まれる放射性物質の規制値について、放射性セシウムの規制値を、「一般食品」は1キログラム当たり100ベクレル、新たに設ける「乳児用食品」と「牛乳」は同50ベクレル、「飲料水」は同10ベクレルとする「案」をまとめ、12月22日の薬事・食品衛生審議会の部会に提示されました。
さらに、この度の規制値の設定にあたり、放射性セシウムによる年間被曝の許容上限を暫定規制値の「5ミリシーベルト」から「1ミリシーベルト」へ引き下げる「案」をまとめました。これらの「案」には以下で指摘する問題点があり、認められるものではありません。
また、現在の暫定期制値の見直しにおいて、長い経過措置が設定される可能性があります。適用猶予することなく速やかに行うよう強く求めます。
以上の点をふまえ、下記のように新たな食品の基準値設定を行うよう、強く求めます。
申入れ
1.年間の実質的被曝量を1ミリシーベルト以下にすること
1 もとより放射性物質による被曝は、少なければ少ないほど良いわけです。貴省がこの度提示した規制値では、ICRPが打ち出している一般人の許容量である、年間1ミリシーベルト以下に抑えることができません。食品による内部被曝は、極力ゼロに近づけるべきです。2 放射性セシウム以外にも、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素やウラン、プルトニウム等による内部被曝があり、それに加えて外部からの被曝があります。食品の放射性セシウムによる年間の被曝を1ミリシーベルト以下に抑えるだけでは、年間の被曝を、1ミリシーベルト以下に抑えることができません。3 ストロンチウムやプルトニウムは測定が困難として、セシウムに換算していると報道されていますが、これら健康への影響の大きい核種については、独自の基準を設けるべきです。4 食品安全委員会の食品による健康影響評価は「追加的な被曝を食品のみから受けたことを前提に」したものであり、現状ではこの前提は崩れています。
外部被曝だけをとっても、既に1ミリシーベルトを超えている地域が多く存在すること、福島周辺では、放射能雲(プルーム)やホコリの吸い込みによる外部被曝や、食品を通じた内部被曝がすでに明らかになっており、子どもたちにこれ以上の余分な被曝をさせてはならないのは自明の理です。従って、食品による内部被曝は極力ゼロに抑えることを目指すべきです。

5 学校給食では、子どもたちをできるだけ守るために、40ベクレルを自主的な規制値として運用する動きがあります。貴省がこの度打ちだした規制値は、この動きに冷や水をかけるものであり看過できません。

2.人々の食習慣を勘案すること
チェルノブイリの周辺国であるウクライナでは、主食のじゃがいもは60ベクレル、野菜は40ベクレルなど、日常的に食するものについては、より厳しい基準を設けていますが、貴省の案では、そのような措置が取られていません。人々の食習慣を勘案することを求めます。

3.子どもへの考慮を行い、特に乳児に対する規制値を厳しくすること
1 子どもへの考慮を行い、特に乳児に対する規制値は厳しくすべきです。放射性セシウム以外にも、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素やウラン、プルトニウム等による内部被曝があり、それに加えて外部からの被曝もありますが、一般食品の規制値は、全ての年代で同等に設定されています。また、乳児食品の規制値は一般食品の2分の1にしかすぎないのは、影響の大きさからいっても緩すぎます。
2 子どもは大人より約10倍、胎児は子どもよりも更に放射線に対する感受性が高いために、影響が大きいことは、全米科学アカデミーによる報告でも明らかになっており、原子力安全委員会も考慮するよう求めていますが、厚労省案はこれを十分反映したものにはなっていません。

4.公開の場での丁寧な検証を行うこと
食品の放射性物質の規制値は、一人ひとり、とりわけ、子どもたち、これから生まれてくるいのちに深く関るものですが、公開の場での丁寧な検証が行われてきたとは言えません。予防原則に則った検証を行う場を、幅広い人材のもと、速やかに、公開の場で行うことを要請します。

以上