特定商取引法及び預託法の改正についての意見 ~食品被害防止へ実効性ある改正を~

20FSCW第11号
2020年11月25日

消費者庁長官 伊藤明子様
消費者委員会委員長 山本隆司様

食の安全・監視市民委員会
食の安全・市民ホットライン
代表 神山美智子

特定商取引法及び預託法の改正についての意見

~食品被害防止へ実効性ある改正を~

 

消費者庁は次期通常国会に、特定商取引法及び預託法の改正案を提出する予定で、現在、その改正条文案を検討中であることが報道されています。

食の安全・監視市民委員会は、これらの法律関連で取り扱われる商品・役務に「食品関連商品」が多いことを踏まえ、法・制度改正には食品問題改善への視点も盛り込んで検討すべきと考えます。

例えば、「お試し・定期購入商法」における消費者トラブル件数のトップは「いわゆる健康食品」です。また、同時併用が禁止されている食品添加物が連鎖販売取引で扱われていた健康食品に混入されていた事例もあります。さらに、プエラリア・ミリフィカのような、健康被害を発生させる成分を混入させたダイエットを謳ういわゆる健康食品が未成年者向けにも定期購入商法で販売され、集団消費者被害を発生させた深刻事例もあります。

このように、生活上の「消費者取引」は「表示」や「安全」問題と一体であり、取引被害、健康被害は密接に関連しています。これまでのような「縦割り行政」では被害防止への効果は極めて薄いと思わざるを得ません。今回の改正案の検討はその点も重視すべきと考え、当会では次の点を盛り込むことを強く要望します。

 

  1. コロナ禍の中、政府が提唱する「新しい生活様式」は、インターネット通信販売を推奨しています。ネット通販は今後も急増してきます。通信販売での消費者被害の防止には通信販売全体に「クーリング・オフ」を導入してください。

【理由】

消費者トラブルが急増している「お試し・定期購入商法」では、被害のトップが「いわゆる健康食品」で、これら商法は特定商取引法の「通信販売」に位置付けらます。改正案では「詐欺的な定期購入」を禁止行為として位置付けるようですが、これでは後追い的な措置となり、新たな被害に対応できません。通信販売全体にクーリング・オフ制度を導入すべきと考えます。

 

  1. 「取引」の違法性を審査するときは、「安全」「表示」面からの一元的連携を確保することを運用基準として明確にして下さい。

【理由】

プエラリア・ミリフィカは、含有食品がダイエット向けとして販売され、多くの女性に下痢、生理不順、ホルモンバランス異常などの健康被害を発生させました。当初は「安全」の問題として、のちに、「定期購入」販売という「取引」の問題として、最後には「表示」の不備の問題としてそれぞれ管轄官庁が問題化しました。一元的に対応できるよう運用基準として明確化すべきと考えます。

 

  1. 特定商取引法の「指示」処分規定に「返金措置」など、救済制度の記載を明記して下さい。

【理由】

特定商取引法の「28年改正」では、違犯事業者への「指示」(第7条)として主務大臣は、消費者の「利益の保護を図る措置その他の必要な措置をとるべきことを明示することができる」と盛り込まれました。当時、消費者の利益の保護を図る措置の中には「返金」が含まれることが説明されていました。しかし、返金を事業者が指示された違犯事件はまだありません。法執行にあたっては、返金措置などあらゆる救済措置を指示できることを明記すべきと考えます。

 

  1. 過量販売の定義を明確にし、消費者権利と利益を擁護する視点で改正して下さい。

【理由】

改正法の検討では、過量販売規制の強化も予定されています。改正にあたっては不適正な健康食品などを大量に購入させられている被害の実態に即して、定義や対象範囲を消費者の権利と利益を重視した消費者目線から実施して下さい。被害者は判断力が低下した高齢者だけではなく、中高年にも広がっています。

 

  1. 越境消費者トラブル防止に向けた国際化対応がとれる法制度へと改善して下さい

【理由】

国際化への対応として、法制度の運用にあたっては国境を越えた越境消費者トラブルについても対応できるようにすることが重要です。海外の危険な健康食品がネット販売される例は後を絶ちません。デジタル・プラットフォーマー介在取引については、プラットフォーム会社の責任の明記をはじめ、法律でも被害防止措置がとれることをきちんと明記すべきと考えます。

 

  1. 特定継続的役務を指定して規制する指定制度の廃止を明記して下さい。

【理由】

現行の特定商取引法は、消費者被害の拡大に伴って特定継続的役務を指定し、規制する方式をとっています。しかし、指定外の継続的役務でも、いわゆる健康食品が販売されたり、健康・身体被害発生の恐れがある商品が取り扱われる例もあります。新たな対象分野を見極めるために、継続的な情報把握や分析を実施している間に消費者被害は拡大します。現行の指定制度を廃止して、継続的役務取引のすべてを規制対象にする法改正を実施すべきと考えます。

以上

 

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