newsletter No.33

No.33

2012年6月29日

 目  次

・第10回食の安全・監視市民委員会総会報告
・総会記念シンポジウム報告
・消費者庁・食品表示一元化検討会報告書案「消費者の権利が置き去りにされた内容は問題」
・韓国の食品表示と消費者が求める食品表示
・新刊紹介「なぜ、いま『魚の汚染』か」
・コチニール色素によるアレルギーと消費者庁の注意喚起
・映画『フード・インク』の監督が語るアメリカの食と農の現状
・トピックス①/BSEでの新たな問題「非定型」とは?
・トピックス②/放射能分析を強化し、子どもたちの安全と未来を守りたい
・トピックス③/TPPへの参加は延期
・FSCW運営委員会報告

巻頭言

 4月20日、北海道から鹿児島まで15の地方裁判所に、茶のしずく石けん損害賠償請求訴訟が起こされました。さらに各地で弁護団ができ、訴訟準備を進めています。6月4日の東京地裁をトップバッターとして、5日京都地裁、6日福岡地裁など、各地の裁判所で口頭弁論が始まっています。東京の場合、すでに来年1月21日の第4回期日まで決まっています。

 普通の民事訴訟では、口頭弁論とはいうものの、書面(訴状や準備書面)を「陳述します」というだけ(読んだことにする)で、傍聴しても何をしているのかさっぱりわかりません。

 茶のしずくのように社会的問題では、訴状要旨を現実に朗読し、原告(被害者)が意見陳述をします。また関係者や傍聴人が多いので、その裁判所の一番大きい法廷を使うことになります。

 東京地裁への提訴のとき、地下鉄出口から裁判所入口まで横断幕を持って行進しましたが、この幕は裁判所に入ったとたん小さく丸めさせられました。第1回期日のとき、原告の人に分かるよう小さい看板を持ってロビーに立っていたところ、これは裁判所が規則で禁止しているプラカードに該当するとして引っ込めさせられ、仕方なく○の中に茶と書いた小さいボードを首からさげました。
 法廷では撮影禁止なので、最初の3分間のみテレビカメラが入ります。一体誰のための裁判なのでしょうね。

 東京地裁の第1回期日に、石けんを大々的に売った悠香は誰も出てきませんでした。訴状に対する答弁書も、「原告の請求を棄却する」と書いてあるだけで、原告の請求のどこをどう争うのかなど書いてありません。
 第1回期日に限り、被告が出頭しなくても、擬制陳述といって、答弁書のとおり主張したことにする扱いができます。悠香は他の裁判所でもこんな答弁書しか出していません。

 この事件の特異性は、石けんで顔を洗ったら小麦を食べられなくなった、食べると重大な被害をこうむるという点にあります。被害者はもともと小麦アレルギーだったわけではないので、成分表示に「加水分解小麦末」と書いてあり、「肌に合わない場合は使用を中止してください」と書いてあっても責任を逃れることはできません。

(神山美智子)