newsletter No.56

No.56

2018年3月26日

 目  次

・消費者による遺伝子組み換え食品表示制度検討会を開催
・消費者庁の遺伝子組み換え表示検討会では厳格な表示を実現できない
・消費者庁を相手に情報開示請求訴訟――機能性食品表示性制度の現行運用で消費者の健康・安全は守れるのでしょうか
・来日中のシンガポール健康促進局と健康食品制度について意見交換
・トピックス:TPP11協定の署名行われる 食の安全にも影響、徹底した国会審議を
・FSCW運営委員会報告
・出版記念講演会と総会案内

巻頭言

  一匹の妖怪が世界を徘徊している――独裁主義という妖怪が。
 中国、ロシア、北朝鮮やシリアだけでなく、アメリカもトランプ独裁政権です。これを歓迎し、あるいは認めている一定の人たちがいます。
 独裁の最大の問題は、人の命が軽んじられることでしょう。日本も例外ではありません。人が大勢殺されているわけでも、大勢投獄されているわけでもないので、見えないだけです。

 過労死、孤独死、基地周辺の落下事故・犯罪、災害関連死、原発作業員の放射線被ばく、子どもの貧困、生活保護費削減、裁量労働、非正規雇用の拡大などなど、私たちの命は軽視され続けています。
 それでも、私を含め多くの人々は、身近に迫った危機としては見えていません。見えないものは存在していないのと同じですが、見えるようになったとき、その存在はもう取り除けないほどの圧力をもって迫ってきます。
 太平洋戦争も、多くの人の証言によれば、知らないうちに巻き込まれていたと言われています。

 しかし、こうした世の中の流れに棹差して、批判的な活動をしてきた人々は、残念ながら、次々に亡くなっています。水俣病の患者に寄り添う小説『苦界浄土』の作者石牟礼道子さん、平和の俳句の選者だった金子兜太さん、私たちの仲間の生井兵治さんなどです。

 このたび、「遺伝子組換えイネ実験ノート」情報公開請求裁判の判決があり、原告の全面的敗訴でした。主任の柳原敏夫弁護士は、控訴したいと次のように述べています。「これだけ訴訟戦術的に法律論を突き詰めて、まともな裁判官ならノーと言えないところまで議論を詰めたにも関わらず、これを無視したのは、もはや法律技術のレベルのことではなく、『先端科学技術の真相は決して表に出さない』という先端科学技術ムラの政治的なレベルの問題です。いわば、遺伝子組み換え作物の野外実験の可否や原発事故に対する子どもたちの避難の問題と同様のレベルの問題です。なので、この裁判に真っ当な判決を引き出すためには、市民運動による正しい圧力が不可欠です。」

 国有地不当払い下げ事件では情報を隠し続けて幕を引こうと必死です。働き方改革という名前の労働法制改悪は、基礎資料をねつ造してまで強制しようとしました。
 まさに、市民運動による正しい圧力が不可欠です。

(神山美智子)