「我が国におけるBSE対策の見直しについて」に対する要請書

04FSCW第16号
2005年3月30日

食品安全委員会
委員長 寺田雅昭 様

食の安全・監視市民委員会
代表 神山 美智子

要請書

2004年10月15日に厚生労働省・農林水産省から諮問された「我が国におけるBSE対策の見直しについて」に対し、05年3月28日、貴委員会プリオン専門調査会は答申案をまとめました。

私たちは以前より食の安全については慎重に審議し拙速な結論を出すべきではない、と要請しておりましたが、特にBSE(牛海面状脳症)の全頭検査の見直しの項目について、米国からの牛肉製品輸入禁止措置解除の圧力に応えるタイミングで、以下のように内容としても科学的とはいえない今回の答申案をまとめたことは貴委員会の存在理由そのものを疑わざるをえません。私たちはこの答申書案の撤回と食品安全委員会においてさらに慎重な審議を続けることを求めます。

1.今回の答申案の作成過程において「20ヶ月齢以下の牛をBSE検査から外しても全頭検査を実施した場合と感染リスクは変わらない」との結論が前提とされる審議が行われた。
それは、貴専門委員会で、定量的評価ではデータ不足であることや各種の仮定に基づく評価しか行えない、という限界があるとみるや、定性的評価の手法を全面に出し、若齢牛を外した検査と全頭検査を行った場合に、いずれも「無視できる~非常に低い」という評価レベルとされ、若齢牛を外しても結果は変わらないのだ、という結論をなんとしても出そうとしたことに現れている。

これは科学的評価とはいえず、あいまいな言葉による政治的なカモフラージュと言える。

2.3月28日の答申案には、BSE検査の後退に慎重論を唱える委員の意見も「5 終わりに」に付けられたが、そうした意見が今後、リスク管理機関に対して効果的に作用する保障はなく、結果的に今回の答申案は、玉虫色の表現をとりつつ国内のBSE対策を後退させるお墨付きを与えた。
国内の各地のと畜場では全頭検査が今後も事実上続けられることから、この政策の見直しは米国の牛肉の輸入再開を導くための形式的なプロセスに他ならない。

3.日本におけるvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)患者の死亡という衝撃的な事実や国内16頭目の感染牛が発見されている現在、BSEの発症メカニズム、vCJDの感染ルートなど未解明なまま、全頭検査の後退を認めることは消費者の不安を増大させる。データ不足を補う意味でも、また科学的知見が十分でない場合には予防的な考え方に基づいて、全頭検査を続け慎重なBSE対策を続けるべきである。
現在、BSE検査以外の、飼料規制、SRM(特定危険部位)の除去の徹底が全国的に完了していない。動物の飼料におけるラインの完全分離、SRMの完全除去(ピッシングの中止など)などの実施後に改めて検査体制を検討すればよいのである。

今後、政治的に米国牛の輸入再開が始まれば、米国でのBSEのリスクが日本におけるvCJDのリスクの増大につながることになるが、それを食品安全委員会は座視することになり、今後その責任を問われることになろう。

4.食品安全委員会は、3月28日の答申案の上記の問題点をふまえ拙速に最終答申案とすることのないように求める。また今後この件で実施されるパブリックヒアリングやリスクコミュニケーションにおいては全頭でのBSE検査を求める消費者の声を尊重し、今後も、と畜される牛の全頭でのBSE検査、死亡牛のBSE検査の徹底を図ることをリスク管理機関に勧告すべきである。

5.今後、米国産牛肉のリスク評価を行う場合は、日本と同様の検査体制を求め、EUの評価なども参考とし、またしっかりとしたデータをもとに米国の食肉加工場での実態をふまえて慎重に行うべきである。

以上

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