機能性表示食品制度の廃止を含む抜本的見直しを求めます~小林製薬によるサプリメント自主回収について~

23FSCW第9号
2024年3月26日

厚生労働省大臣        武見 敬三様
消費者及び食品安全担当大臣  自見 英子様
消費者庁長官         新井ゆたか様

食の安全・監視市民委員会
共同代表 佐野真理子 山浦康明

機能性表示食品制度の廃止を含む抜本的見直しを求めます
~小林製薬によるサプリメント自主回収について~

食の安全・監視市民委員会は、食品安全問題につき、調査・監視をし、必要な意見を公表することを目的として設立されました。
2024年3月22日、小林製薬はサプリメント(機能性表示食品)の自主回収を公表しました。この製品を摂取した消費者13人に腎疾患が発症し、うち6人が入院し、人工透析が必要になった人もあったとのことです。26日には、死亡につながった可能性がある事例も発表されています。
報道によると、同社は問題とされる紅麹を約50社に原材料として提供しており、そのうち提供先の宝酒造など数社も自主回収することを発表しました。宝酒造の対象商品は日本酒の「松竹梅白壁蔵『澪』」計約9万6千本です。他社製品の食品も含め、今後、健康被害の拡大が心配されます。
機能性表示食品は、事業者が自ら機能性及び安全性に関する資料を収集し、消費者庁長官に届け出ることにより、販売と機能性表示が可能となる食品です。事前の安全性チェックはないという重大な問題があります。小林製薬は下記製品を2021年2月から本年2月末までに、約106万袋を販売したと報道されています。
3月25日現在の報道では、同社はまだ原因となった毒性成分の特定に至っていないとしていますが、これらの食品には、「カビ毒のシトリニン」または「想定外の有害物質」の存在が疑われます。したがって、これら食品は、食品衛生法第6条2号もしくは3号に定める「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの」「病原微生物により汚染され、またはその疑いがあり、人の健康を損なうおそれのあるもの」に該当することは明らかです。
厚生労働大臣は、食品衛生法第7条に基づき、直ちに販売禁止の措置をとるべきであり、同時に、消費者担当大臣および消費者庁長官は、機能性表示食品制度廃止を含むチェックの仕組みを強化・見直すことが必要と考え、下記の点を要望します。
なお、下記項目の対応について4月10日までに回答をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。回答は当会公式サイトに公開することを予めご了承ください。

1. 公表された食品以外の、問題の紅麹原材料を使用した全ての食品につき、販売業者名、商品名などの全容を公表するとともに、それらについて早急に販売禁止及び回収命令措置を講じてください。

2. 入院が必要な腎疾患を発症するほど重大事故が発生していることを重視し、速やかに事故情報の追跡調査を実施し、健康被害者を発掘するとともに、摂食した人の健康調査に取り組んでください。同時に、在庫品など回収から漏れる食品を摂食しないよう、webサイトやプレスリリースなどを活用し、消費者への注意喚起体制を万全に敷いてください。

3. 事故発生食品に機能性表示食品があったことを重く受け止め、事業者の責任で機能性が表示できる同制度の現行運用では消費者の安全性は確保できないと見極め、届出制を前提とした同制度の廃止を含む抜本的見直しに早急に取り組んでください。

4. 厚生労働省と消費者庁が連携して実施している現行の「食品の自主リコール報告制度」を抜本的に見直し、指定成分による健康食品の事故だけではなく、食品全般を対象とした事故発生の報告義務を食品事業者に課す食品事故情報の報告義務と、寄せられた情報を公開する「報告義務・公開制度」を早急に導入してください。

5. 現行の指定食中毒被害などの狭い範囲での規制・救済策ではなく、食品全般を対象とした健康被害者の救済を目的とする食品被害者救済制度を導入・整備してください。

以上

<連絡先> 食の安全・監視市民委員会
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 1-9-19-207
Tel:03(5155)4765 Fax:03(5155)4767
E メール:office@fswatch.org