体細胞クローン牛・豚の評価ワーキンググループ委員選出についての 再度の申し入れ

08FSCW第10号
2008年5月28日
食品安全委員会委員長 三上 彪 様
新開発食品専門調査会座長 上野川 修一 様
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
NPO法人日本消費者連盟気付
Tel 03-5155-4765 Fax 03-5155-4767
 
体細胞クローン牛・豚の評価ワーキンググループ委員選出についての
再度の申し入れ

 
 2008年4月17日付、08FSCW第4号文書「体細胞クローン・豚の評価ワーキンググループ委員選出についての申し入れ」への、4月23日付回答を受理いたしました。早速の回答をありがとうございました。
さて、当委員会は、受け取りました回答に対しましては下記に表明しましたように納得しがたい内容であると考えます。
このことにつき、2008年6月9日までに貴意を書面にて回答されたく、再度申し入れます。
 2008年4月1日、厚生労働省は、体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品についての食品健康影響評価を、食品安全委員会に諮問しました。
事実経過としては、2000年~2002年度に厚労省が、厚生労働科学科学研究費補助金の事業として実施したクローン牛の肉と乳の安全性に関する研究の結果を受けて、今回の食品安全委員会への諮問となったものです。こうして、食品安全委員会は、評価審議を新開発食品専門調査会に付託し、同調査会は他の専門調査会委員等も参加したワーキンググループを設置しました。ところが、このワーキンググループを構成する専門委員の中に、緊急時対応、微生物・ウイルス、かび毒・自然毒等の各専門調査会委員である、熊谷進東京大学大学院農学生命科学研究科教授が含まれています。同教授は、厚労省が今回の諮問に際して提示した「我が国における安全性に関する研究」資料において、2000年~2002年度厚生労働科学研究費補助金事業「バイオテクノロジー応用食品の安全性確保及び高機能食品の開発に関する研究」の分担研究報告書「クローン牛の食品としての安全性」の分担研究者として署名されているという、事実経過があります。

食の安全・監視市民委員会は、「熊谷教授は申請資料の作成者その他その作成に密接に関与した委員に該当するので、ワーキンググループでのリスク評価審議に加わるべきではないことは明らかであると考える」との申し入れを、08年4月17日、食品安全委員会に提出しました。

08年4月23日付の回答は、体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品の安全性に関するリスク評価については、組み換えDNA技術応用食品や農薬等の場合とは異なり、利害関係者からの審査申請を受けて行う評価ではないため、「食品安全委員会における調査審議方法等について」(03年食品安全委員会決定)の「決定」が想定している場合には該当せず、熊谷専門委員の調査審議への参加に問題はない、という 内容でした。

これは、利益相反をどのように考えるかの問題です。06年3月、タミフルの副作用有無の調査結果を「関連は認められない」と報告した、厚労省研究班班長の横田俊平横浜市大教授がタミフルを輸入販売する中外製薬から多額の奨学寄付金を受けていたことが発覚しました。研究の中立性と公正さに対する疑問が社会的に指摘され、厚労省は08年3月、薬事分科会審議参加に関する遵守事項として「利益相反ルール」を決定し、利益相反ルールのない大学・研究機関の研究者に研究費を出さない方針を決めました。
本件クローン家畜の評価は、企業や事業者等の「利害関係者から」の審査申請を受けての評価ではありませんが、厚労省がクローン技術に由来する食品の開発研究 に研究費を補助し、その研究成果が今回の厚労省の諮問の申請資料になっているのは事実です。
研究費を補助して研究させた厚労省が評価諮問した構図は、申請者が開発企業か、開発研究した厚労省かの違いのみにすぎません。さらに、上述の「決定」の「3②当該申請者から研究費を受けている場合」にも該当すると考えられます。
以上の事実経過からみて、今回ワーキンググループにおける評価審議の中立性と公正さに重大な疑義を問われると考えます。

以上