「『健康食品』に係る今後の制度のあり方について提言」の実施についての意見

2004年12月17日

厚生労働省医薬食品局食品保健部
基準審査課新開発食品保健対策室御中

食の安全・監視市民委員会
代表 神山 美智子
東京都新宿区早稲田町75
日本消費者連盟気付
TEL 03-5155-4765

「『健康食品』に係る今後の制度のあり方について提言」の実施についての意見

 私たちは、予防原則の立場から、食品の安全問題について広く調査・監視し、政策提言を行うことなどを目的に設立された市民団体です。
『健康食品』に係る今後の制度のあり方について(提言)にの実施について、以下のとおり意見を申しでます。

 多発している『健康食品』による健康被害、消費者被害を防止するため、薬事法を厳正に適用するべきである。

 その前提として、違法表示氾濫の現状を正しく認識するためのより具体的な情報収集をするべきである。

 問題解決のために、薬事法、健康増進法、食品衛生法の関連性を明確にし、食品と医薬品・医薬部外品の区分を見直し、薬理効果のある成分を含有する『健康食品』は、すべて特定保健用食品に取り込み、それ以外の食品については、一切の効能表示・広告を禁止すべきである。『健康食品』という名称は禁止すべきである。
また規制は表示、広告のみでなく、商品の名称も対象とするべきである。

 条件付き特定保健用食品の制度化には反対である。

 栄養機能食品における表示禁止事項は速やかに改正するべきである。

 食生活に関する表示に賛成する。

 表示があまりに過度になり、逆にわかりにくくなるおそれがあるので、消費者に分かりやすい表示制度を構築すべきである。

意見の理由

 まず『健康食品』による健康被害、高額商品による消費者被害が多発している現状を充分把握すべきである。一部の新聞、雑誌、折り込みチラシ、通信販売カタログ、ホームページ等には、「血管の老化を防ぐ」「関節痛をとる」「排尿障害を防ぐ」「痩せる」などの薬効をうたう広告・宣伝が氾らんしている。違法広告はあまりに数が多く野放し状態となっている。こうした現状を正しく把握するため、恒常的な情報収集システムをまず構築し、これに対し、薬事法の適用を厳正に行うべきである。こうしたいわゆる健康食品は非常に高価であり、訪問販売、通信販売などによる消費者被害も多発している。当市民委員会はこうした数々の違法広告に対し、個別に改善を申し入れ、一定の成果を挙げているが、違法広告は後を絶つことがない。

 『健康食品』に関する制度改革は、まずこうした違法状態をただし、健康被害、消費者被害の根絶を目指すものでなくてはならないはずである。今何よりも求められるのは、薬事法の厳格な適用であり、薬事法、健康増進法、食品衛生法の関わり方の明確化である。痩せるなどの薬効をうたっている商品を、景品表示法による優良誤認表示として規制するのは、『健康食品』問題の真の解決策にはならない。

 そのため、医薬品・医薬部外品と食品の区分を再検討し、一定の薬効を持った成分は、特定保健用食品等の許可制度に取り込み、「薬効をうたわない限り食品に含んでも良い成分」リストを廃止すべきである。本来何らかの薬効がある成分について、薬効をうたわないことを条件に食品への含有を認める制度は実効性に欠けると言わざるを得ない。
また現在、医薬品リスト・食品リストのいずれにも含まれない成分については、厚生労働省に対し照会する制度が設けられているものの、義務化されているわけではないので、健康食品メーカーが、どちらのリストにも掲載されていない成分の薬理作用を発見して、商品には直結しないホームページなどで論文を掲載している例も存在する。
一定の薬理作用、生理調整作用等、身体に何らかの影響を及ぼす成分を抽出して食品に利用する場合は、すべて事前にその効果及び安全性を証明させ、個別に許可する医薬品・医薬部外品に準じた規制をするべきである。その場合、許可に必要な試験データ、評価方法等も明確にすべきである。

 したがって、それさえ食べていれば健康になれるという誤解を生じている『健康食品』という名称は禁止すべきである。さらに健康や薬効を暗示させる商品名も、表示の一部として規制対象にするべきである。
「条件付き特定保健用食品」のように、「効果が科学的に証明されない健康食品」などという制度を創設することは、不当表示、不当商品を野放しにするおそれがあり、絶対に認めるべきではない。

 現在の『健康食品』の表示は、あまりに複雑でまた表示すべき事項が多岐にわたっており、消費者はかえって表示を見ないか、あるいは見ても理解できない。消費者は表示によって商品を選ぶのではなく、商品名によってもたらされる暗示効果、宣伝・広告によって商品を選択しているのが現状である。したがってまず商品名を含む宣伝・広告を規制し、商品への表示を消費者にわかりやすいものにする方策を検討しなくてはならない。提言案が提示する表示内容では、わかりにくい表示をさらにわかりにくくする結果になるだけではないかと危惧される。

 なお栄養素機能表示が認められていない成分についての栄養機能表示禁止は早急に実施すべきである。市場にあふれる栄養素その他成分の機能表示を放置している現状は、栄養機能表示制度の根幹を揺るがしている。

 さらに言えば、もっとも必要なことは国民が健康でバランスのとれた食生活を送るための教育である。なぜなら『健康食品』は、国民の健康づくりに有効に機能しているとは言い難いからである。『健康食品』を利用する消費者は、アンバランスな食生活のゆがみを『健康食品』で補おうとしている傾向があり、いっそう食生活のアンバランスを促進する結果となっている。また高齢者は、年齢から来る足腰の痛みや排尿障害などを『健康食品』によって改善しようとする傾向があり、効果も不明でかつ高価な『健康食品』を買わされている事例が多数見受けられるのである。

こうした現状を改善するには、バランスのとれた食品を適量食べ、適度の運動とストレスのない生活を送れるような、社会システムこそ必要である。『健康食品』問題だけでなく、働き方の改革、学校教育の拡充などが緊急の課題である。

以上