ポカリスエット問題に関する消費者庁に対する要請書および抗議声明

21FSCW4号
2021年10月1日

消費者庁長官 伊藤明子 様

食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
<公印省略>

要請書および抗議声明

「消費者庁は消費者の利益擁護のために事業者に対して厳格な表示ルールを指導することを求めます。~ポカリスエット問題での消費者庁の対策は消費者の権利を尊重する視点が欠けています」

1)消費者庁は2009年、消費者基本法第2条基本理念に定める消費者の権利尊重にのっとり消費者の利益の擁護、消費者の商品の合理的な選択の確保、表示に関する事務などを任務として設置されました。2021年現在のそのウエブサイトでも、消費者庁の使命として「消費者行政のかじ取り役として消費者が安心して安全で豊かに暮らしていける社会を実現すること」としています。また消費者庁のこの使命実現のための行動指針として「安全・安心な商品及びサービスが市場に提供されるよう消費者・生活者の視点に立つこと」「消費者行政の推進のため、コミュニケーションを重視し、情報発信にあたっては受け手の立場に立つことを心掛ける」としています。「消費者庁は、消費者の立場から、各省庁の所管を越えた、新しい、多くの困難な課題に取り組まなければなりません。そのため、従来の行政の発想にとらわれるのではなく、前向きに、できる方法を考え、解決に向かって、全力で、積極果敢に挑戦し、一歩ずつでも前進し続けます。」とも述べているのです。

2)しかし、食品表示に関する対応はこうした消費者庁の行動指針に反するものと言わざるを得ません。

ポカリスエットに含まれるグレープフルーツ果汁は高血圧患者が服用するカルシウム拮抗剤や免疫抑制剤との相互作用がみられると、厚生労働省も研究結果をホームページで公表しており、私たちもその点を懸念しています。

そのため私たち食の安全・監視市民委員会は、当該製品を販売している大塚製薬㈱に対してグレープフルーツ果汁がポカリスエットに含まれていることを表示することを求め、また消費者庁にも事業者が表示を行うことを指導することを求めてきました。

2021年7月6日には大河原まさ子衆議院議員のあっせんにより同秘書の同席のもと、消費者庁食品表示企画課の担当者とこの問題で意見交換し、当該担当者から「義務表示とまでは言えないが事業者は消費者に伝えることが望ましい」との発言もありました。

しかしその後8月31日に私たちが当該担当者にメールで質問したところ、消費者庁は「申し入れがあった飲料によるグレープフルーツと医薬品の相互作用の事実は承知していない」「食品表示基準の原則で表示すればよい」との機械的な回答しかありませんでした。

9月17日の私たちの再質問に対しても、消費者庁の担当者の9月24日のメールでは、「大塚製薬(株)と表示の義務化について意見交換をしたかどうか」について私たちが尋ねたところ、「個別事業者との接触等の情報につきましては、提供できかねます」と回答するばかりでした。また「コロナ禍にあって自宅療養者にポカリスエットを大塚製薬(株)が配布していること」について意見交換したかどうか、と私たちが質問したことに対しても、消費者庁は「個別事業者との接触等の情報につきましては、提供できかねます」と事実上回答を拒否しました。さらには、「この件で厚生労働省との意見交換をしたのか」と私たちが質問したのに対して、「カルシウム拮抗剤や免疫抑制剤との相互作用に関しては、当方が所管する事項に関連しないことから、コメント等はありません」と役所の縦割りそのものの回答でした。消費者庁設置にあたっては「消費者行政の縦割りをなくし、横ぐしをさすこと」がその使命であったはずであり、それにも反しています。

3)このような消費者庁の対応はとても消費者行政を所管する役所の行動ではありません。この度の旧態依然たる役所の対応を私たちは到底許すわけにはいきません。強く抗議するものです。消費者庁はその設置の原点に立って消費者の権利を尊重し、食品表示のあり方についても消費者の選択権を確保し、事業者に対しても厳しい指導を行うこと、また消費者行政の実施方法についても詳細に消費者に情報提供を行うことを求めます。

以上