遺伝子組換え表示制度に関する検討会の議論に対する抗議および要請

2017日消連第26号
17FSCW第36号
2017年10月3日
消費者庁長官 岡村和美様
遺伝子組換え表示制度に関する検討会座長 湯川剛一郎様
遺伝子組換え表示制度に関する検討会委員各位
特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
共同代表 大野和興
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

抗議および要請
 2017年9月27日に行われた「第5回遺伝子組換え表示制度に関する検討会」の議論および座長の「まとめ」に抗議するとともに、現行の表示制度の問題点や改善点について丁寧に検証し改めて議論することを要請します。

同日の検討会では、一部の委員から「消費者が誤解するような現行の表示制度は問題である」といった意見や、表示対象の拡大や混入率の引き下げを検討すべきとの要望が出されました。6月開催の第2回検討会でも消費者団体等ヒアリングにおいて「消費者が誤解することのないよう、すべての食品に表示を義務付けるべき」や「消費者の権利を保障する表示制度にすべき」という意見が述べられました。

その際、全食品を表示義務対象とし許容率を0.9%としているEU(欧州連合)の例も紹介されました。EUの全食品表示や混入率について、「EUで可能なことが日本でできないはずはない」という意見があったにもかかわらず、それの検証も行わずに「食料自給率が高いEUとは事情が違う」などと結論付けるのは乱暴すぎます。混入率問題についても、「日本の5%は高すぎる。引き下げるべき」との消費者代表意見について、何ら具体的な検証は行われていないのは問題です。第5回検討会で委員から意見が出ていたように、現行の制度のままでよしとするなら検討会を行う意味はありません。

現行の表示制度の問題点について十分な検証を行うことなく議論を進めた上、座長が「表示義務対象範囲は現状維持」と結論付けたのは問題です。前述のように委員から現行制度には問題があり、検討が必要という意見が出ていたにもかかわらず、それを無視した座長の「まとめ」に抗議するとともに、消費者庁には第5回検討会で行われた「表示義務対象範囲」に関する議論を再度行うよう求めます。その際には、科学的検証のみで議論するのではなく、組み換えられたDNA等が検出できないしょう油や油にも表示をしている事業者から実態を聞き取るなどして十分な資料を準備してください。

消費者庁の使命は「消費者行政の『舵取り役』として、消費者が主役となって、安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する」ことです。消費者庁には、事業者団体等が主張する「これ以上の表示はできない」ではなく、「遺伝子組み換え食品を食べたくなければ避けられる表示」「消費者の権利を保障する表示制度」をどうすれば実現できるかという視点で議論が行われるよう求めます。また、検討会座長および委員のみなさまには、消費者の権利としての表示制度のあり方についてきちんと捉え、「まとめ」を白紙に戻して、改めて議論いただくよう要請します。

以上